〜チェコ映画の巨匠達〜 その1

Oldřich Lipský (オルドジヒ・リプスキー)

1924年7月4日生-1986年10月19日没

現チェコ共和国南東ペルフジモフ市出身の映画監督であり、生涯を通して風刺と笑いを交えた作品を作り続けた コメディ映画の巨匠です。

リプスキー監督の作品の中で最も有名な映画は、西部劇パロディーである『レモネード・ジョー 或いは、ホー ス・オペラ』(チェコ語題:Limonádový Joe aneb Koňská opera, 1964年)だと思われます。
『アインシュタイン暗殺指令』(チェコ語題:Zabil jsem Einsteina, pánové …, 1969年)はSF映画で、アインシュタインを暗殺しようと未来からタイムトラベルで刺客が送り込まれるという奇抜な設定。
『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』(チェコ語題:Adéla ještě nevečeřela、直訳「アデラは夕食前」、1977年)の主人公は、アメリカのパルプ・マガジンが生み出した探偵ニック・カーター(Nick Carter)で、プラハの街で食人植物と対決します。『カルパテ城の謎』(チェコ語題:Tajemství hradu v Karpatech, 1981年)は、ジュール・ヴェルヌの原作で、スチームパンクの魅力はそのままだが、内容は抱腹絶倒なコメディに変わっています。日本で見ることができるリプスキーの映画はどれも奇想天外で、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しい映画ばかりです。

ちなみに、同じくチェコ出身であるヤン・シュヴァンクマイエルとその妻エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーが『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』、『カルパテ城の謎』に特殊撮影と美術で参加しています。
これはシュヴァンクマイエル夫妻が活動休止に追いやられていた時期のことでもあります。

リプスキーはチェコにて20作以上の作品を制作したが、現在、日本で満足に鑑賞できる作品は上記に挙げた『レモネード・ジョー 或いは、ホース・オペラ』『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』『カルパテ城の謎』の3作のみである(これらは株式会社エプコットよりDVDが発売されている)。『アインシュタイン暗殺指令』はかつてVHSが発売されていたが、現在は生産中止となっています。